もしかして乳腺炎?知っておきたい初期症状と対処法

産後ケア

2025年7月18日

「授乳中、なんとなく乳房が痛いし熱っぽい」そんな症状を「疲れかな?」と見過ごしていませんか?実はそれ、乳腺炎の始まりかもしれません。乳腺炎は初期の段階で適切に対処すれば重症化を防げる一方、放置すると激しい痛みや高熱に悩まされることもあります。
このコラムでは、乳腺炎の初期症状を見分けるポイントや、対処法について解説します。

乳腺炎のサインとは?初期症状をチェック

乳腺炎の主な初期症状は、乳房の部分的な腫れ・赤み・しこりです。触ると熱を持っていたり、ズキズキとした痛みが出たりすることもあります。
さらに進行すると、38℃以上の発熱や悪寒、だるさといった全身症状が現れる場合もあります。片方の乳房に強い痛みを感じたり、授乳が終わっても乳房のしこりが残る場合は、早めのケアが必要です1)

自宅でできる!乳腺炎のセルフケア方法

乳腺炎の予防と初期対応で大切なことは、「母乳の流れを滞らせないこと」です。しこりを感じたら、しこりから乳頭にむけて乳房を押しながら授乳すると、つまりが解消することがあります。このとき、しこりを強く押しすぎると症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。痛みがある場合は、濡れたタオルなどで乳房を冷やすと症状が和らぎます1)

症状が改善しない場合や、発熱があるときは受診しましょう

自宅でのケアを続けても症状が改善しない場合や、発熱があるときは、出産した産院、または母乳外来や乳腺外科を受診しましょう2)
産院では助産師によるマッサージで、乳腺のつまりを解消したり、必要な薬を処方してもらったりすることができます。特に、細菌感染による乳腺炎の場合は、抗菌薬での治療が必要です。多くの場合、授乳中でも使用できる抗菌薬を処方されるため、授乳を継続したまま治療が行えます3)

まとめ

乳腺炎は、誰にでも起こり得るトラブルですが、早めに気づいて対処すれば大きな負担なく乗り越えることができます。
乳房の変化に気づいた時には無理をせず、体のサインに耳を傾けてください。あなたと赤ちゃんの健やかな授乳生活のために、適切なケアを大切にしていきましょう。

監修

柴田綾子 先生
淀川キリスト教病院 医長

参考文献

1) 日本助産学会.乳腺炎ケアガイドライン2020.株式会社日本助産師会出版,2021.
https://www.midwife.or.jp/user/media/midwife/page/guilde-line/tab01/nyusenen_guideline_2020_2.pdf

2) 富山県助産師会.“助産師からのワンポイントアドバイス”.一般社団法人会富山県助産師会.https://toyamamidwife.sakura.ne.jp/midwife/onepointadvice/.(2025-06-26)

3) Julie S. Moldenhauer, MD, Children’s Hospital of Philadelphia. “乳腺炎”MSDマニュアルプロフェッショナル版.2022.https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%94%A3%E7%A7%91/%E7%94%A3%E8%A4%A5%E3%81%AE%E7%AE%A1%E7%90%86%E3%81%A8%E9%96%A2%E9%80%A3%E7%96%BE%E6%82%A3/%E4%B9%B3%E8%85%BA%E7%82%8E.(2025-06-26).

執筆

看護師 山田千文さん