更年期障害の治療法HRTとは?女性ホルモン補充療法の基礎知識

更年期

2025年9月9日

更年期障害とは?

更年期とは、閉経の前後それぞれ5年間を合わせた計10年間を指し、更年期に現れる症状のなかで、ほかの疾患を原因としない多種多様な症状を更年期症状といいます。更年期症状によって日常生活に支障をきたしている状態が更年期障害です1)
更年期障害の主な原因は、加齢に伴う卵巣機能の低下により、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がゆらぎ、急激に減少するためと言われています2)

HRTとは?

更年期障害の治療法の1つが、HRT(Hormone Replacement Therapy)です。HRTとは、更年期にエストロゲンが減少することによる症状や疾患の予防・治療を目的に考案されました。体内で減少する女性ホルモンを、ホルモン剤を用いて外から補う治療法です。しかし、ホルモン剤と聞くと、なんとなく不安を感じ、副作用が心配になる方もいると思います。次にHRTの実際の中身について解説します。

HRTの中身

HRTでは、女性ホルモンの1つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の補充を行います。しかし、エストロゲンは子宮に対して、子宮の内膜を増殖させる作用があり、長期の単独投与は、子宮体がんリスクを上昇させるといわれています。
一方、黄体ホルモンには、子宮内膜組織の増殖を抑制する作用があります。そのためHRTでは、子宮のある方にはエストロゲンと黄体ホルモンを投与します。これにより、エストロゲンの減少を補いつつ、子宮体がんのリスクを減らすことを実現しています。しかし、手術により子宮を摘出している方は、エストロゲンによる子宮体がんリスクの上昇がないため、エストロゲンのみ投与します。

HRTの投与方法は?

HRTではエストロゲン単剤または、エストロゲンと黄体ホルモンを補充します。子宮を摘出していて、エストロゲン単剤で投与する場合は、エストロゲン製剤を連続して投与します。一方で、子宮があり、エストロゲンと黄体ホルモンを投与する場合は複数の方法があります。
基本となる投与方法は周期投与法といい、主に閉経前後に行われ、定期的に月経様の出血を起こす方法です。
10~14日間エストロゲンを投与し、その後、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を10~14日間投与し、5~7日間休薬することを繰り返します1)2)
ほかには、エストロゲンを連続で投与し、黄体ホルモンを定期的に投与する方法や、エストロゲンも黄体ホルモンも連続で投与する方法があります。一人ひとりの希望や閉経後の経過に合わせて選択します。

HRTに使用する製剤の種類

HRTで使用するホルモン剤は錠剤だけではありません。塗るタイプや貼るタイプのホルモン剤もあります2)。自分に合った続けやすい投与方法を選択することで、更年期症状をやわらげ、コントロールすることができます。また、HRTはすべての方が行えるわけではありませんので、産婦人科を受診し、ご相談ください。

まとめ

更年期障害は、悩んでいる本人が原因ではなく、加齢に伴う生理的な反応です。一人で抱え込まず、上手に向き合いながらコントロールしていきましょう。

監修

西田 欣広 先生
にしだ漢方内科・レディースクリニック 院長

参考文献

1) 日本産婦人科学会. “更年期障害”. 日本産婦人科学会.
https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/ , (参照 2025-07-08).

2) 一般社団法人 日本女性医学学会. “ホルモン補充療法を考えている方へ”. 一般社団法人 日本女性医学学会.
https://www.jmwh.jp/pdf/hrt_guide_book.pdf , (参照 2025-07-08).