更年期とうつ病 セルフチェックで早めの対処を

更年期

2025年9月2日

更年期は、女性ホルモンの急激な変化によって心身にさまざまな不調があらわれやすい時期です。疲れやすさやイライラ、不眠、気分の落ち込みなど、つらい症状に悩まされる方も少なくありません。その中には、うつ病と呼ばれる心の病気が隠れている場合があります。本記事では、うつ病の症状や更年期との関わりなどについて解説します。

うつ病とは?女性はうつ病になりやすい!?

日本では、100人のうち約6人が一生の間にうつ病を経験するという報告があります。また、うつ病の患者さんは、男性よりも女性の方が1.6倍多いといわれています。うつ病の原因はいまだにはっきりとわかっていません。女性は妊娠や出産、育児、更年期など環境や身体の変化がきっかけでうつ病になることがあります1)2)3)

うつ病の症状

うつ病の症状には、精神症状(こころの症状)と身体症状があります。精神症状には、気分が一日中落ち込む、眠れない、といったものが挙げられます。病状が悪化すると、死んでしまいたい、といった考えが頭から離れなくなることがあります。身体症状は、疲れやすい、食欲がない、頭痛、動悸、めまいなど多岐にわたります。これらの症状の原因となるような病気がない場合、うつ病の可能性があります。

更年期とうつ

女性ホルモンの変化は、うつ病の発症に関与することがあります。特に、月経前症候群や妊娠・出産、更年期など、女性特有のライフステージでは、心身にさまざまな変化が生じ、うつ症状が現れやすくなります。更年期には、ホルモンの急激な変動によって、のぼせやほてり、発汗、動悸といった身体の不調がみられることがあります4)。これらの症状にうつ病の症状が重なって現れる場合、更年期に関連したうつの可能性も考えられます。

うつ病の治療

うつ病の治療は、どの程度の病状かなど患者さんそれぞれの状態に応じて決定されます。軽症であれば、まずは心と身体が休まるように環境を調整することで症状が軽減することも少なくありません3)。病状が悪化すると、症状に応じて薬物治療や入院治療が必要になる可能性があります。

これってうつ病?セルフチェックで早めの対処を

うつ病は病状が進んでしまうと、日常生活に大きな支障をきたし、回復までに時間がかかることがあります。早期に気づき、適切な対処をすることで、症状の悪化を防ぐことにつながります。東京大学産婦人科が監修しているセルフチェックがありますので、項目の一部を抜粋します5)

  • 身体がだるく疲れやすい
  • 睡眠の質が悪い(寝つけない、途中で目が覚める)
  • 気分が沈む、気が重くなる
  • 食事が入らない、味がしにくい

気になる症状がある方は、チェックリストで確認してみましょう。

まとめ

更年期には女性ホルモンの変化が影響して、うつ病を発症しやすくなる可能性が指摘されています。うつ病は、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。ご自身や周囲の方が不調のサインにいち早く気づき、医療機関に相談することが大切です。一人で抱え込まず、婦人科や精神科、心療内科などを受診しましょう。

監修

西田 欣広 先生
にしだ漢方内科・レディースクリニック 院長

参考文献

1) 厚生労働省. “女性のうつ”. 働く女性の心とからだの応援サイト.
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/depression.html

2) 「厚生労働省事業」東京大学産婦人科学講座監修. “うつ”. 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ. 2024.
https://w-health.jp/climacterium_trouble/depression/

3) 国立精神・神経医療研究センター. “うつ病”. こころの情報サイト.
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL

4)「厚生労働省事業」東京大学産婦人科学講座監修. “ホットフラッシュ”. 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ. 2024.
https://w-health.jp/climacterium_trouble/hot_flash/

5) 「厚生労働省事業」東京大学産婦人科学講座監修. “うつ症状チェック”. 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ.
https://w-health.jp/self_check/self_check_12/

執筆

医師 江口瑠衣子さん