意外とやりがちなデリケートゾーンの間違ったケアとその理由

女性の体の中でも、デリケートゾーンは特に繊細です。「丁寧にしよう」と思ってやっているケアが、逆にトラブルの原因となってしまうこともあります。本コラムでは、意外と多くの方がやってしまいがちな避けたいデリケートゾーンケアについて、理由とともに解説します。

洗い過ぎない1)

「清潔にしたい」と思うあまり、1日に何度も洗ったり長時間念入りに洗浄したりする方もいるようですが、かえって感染や刺激、外陰炎などのリスクを高めてしまうため、逆効果です。外陰部や膣周囲には皮膚や粘膜を守る「微生物叢(びせいぶつそう)」(腸内細菌叢のようなもの)と呼ばれる生態系が存在し、このバランスが保たれることで感染や炎症から守られています。しかし、デリケートゾーンの洗い過ぎで微生物叢のバランスが崩れると、守ってくれる微生物が減少してしまい、カンジダなどにかかりやすくなってしまうこともあります。デリケートゾーンを洗うのは、1日1回(多くても2回以内)程度にしましょう1)。腟内は絶対石鹸で洗わないようにしましょう。

強く拭かない1)

デリケートゾーンの皮膚は、非常に摩擦に弱い部位です。トイレットペーパーで強くこする、タオルでゴシゴシ拭くといった摩擦刺激は、デリケートゾーンの皮膚バリアを傷つけて乾燥やヒリヒリ感、炎症の原因になります。軽微な刺激が慢性的な痛みやかゆみにつながることもあるでしょう。トイレの後の拭き取りは「前から後ろへ」「軽く押さえるだけ」が鉄則です。また、ビデや温水洗浄トイレも使いすぎると微生物叢のバランスを崩します。

刺激の強い石鹸を使わない1)

デリケートゾーン洗浄には、なるべく専用の低刺激・弱酸性洗浄剤を選びましょう。皮膚や膣内のpHバランスを崩してしまう恐れがあるためです。一般的なボディソープや石鹸には、強い洗浄成分や香料、界面活性剤などが含まれているものが多く、デリケートゾーンに刺激を与えます。この刺激がアレルギーや炎症を起こし、症状を悪化させる原因になる可能性があります。腟内のpHは4.5以下の弱酸性が正常です。弱酸性のデリケートゾーン用ソープなどを使うようにしましょう。

その他1)

陰毛の脱毛・除毛

陰毛は外部刺激や病原体から皮膚を守る役割があります。脱毛や除毛の際に皮膚を傷つけると、炎症や感染のリスクが上がります。施術時は十分注意しましょう。

通気性の悪い衣服

ぴったりした下着や衣服はデリケートゾーンのムレや摩擦を引き起こし、かゆみやトラブルの原因になります。

香料入りの生理用品やトイレットペーパーの使いすぎ

香料や防腐成分はアレルギーや炎症の原因になる可能性が指摘されています。使い過ぎは避けた方が安心です。

まとめ

デリケートゾーンケアでは、本来のバリア機能や微生物叢、pHバランスを守る、といった観点から行いましょう。「たくさん洗えば安心」「念入りに拭けば清潔」といった思い込みは逆効果になることを理解して「やさしく、刺激を与えすぎない」を心がけたケアを行いましょう。

監修

宮本亜希子 先生
BIANCA CLINIC 女性医療クリニックLUNA スワンクリニック銀座

参考文献

1)Alessandra Graziottin.Maintaining vulvar,vaginal and perineal health: Clinical considerations, Womens Health (Lond). 2024 Feb 23,20:17455057231223716.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10894559/

執筆

臨床検査技師 佐々木祐子さん