夫婦間で性にまつわる気持ちやズレを本音で話すのは、照れや遠慮があって後回しになりがちです。しかし、話さないことが誤解や距離感につながり、親密さや安心感を損なうこともあります。
そこで活用できるのが、内閣府男女共同参画局が提供する「○○家作戦会議」シートを使った対話の時間です。このシートを使ってお互いの希望や不安を可視化しながら話し合い、セクシャルウェルネス=心も体も満たされる豊かな関係性を育てていきましょう。
「○○家作戦会議」シートとは何か
「○○家作戦会議」シートは、本来家庭内の課題や役割分担を話し合うためのツールです。しかし、夫婦の関係性において「性」についての本音を出し合う場にも応用できます。
シート利用の目的は、お互いが感じていることを言語化し、すれ違いや遠慮を明らかにして、具体的な行動につなげるための共通の土台を作ることです。お互いが安心して話せる空気を作るためのきっかけとして非常に使いやすい構成になっています。
「○○家作戦会議」シート
「○○家作戦会議」シートは自由な発想で活用できますが、ここでは夫婦間の対話をよりスムーズにするための一例として、5つのステップをご紹介します。
1.時間と場所を決める
落ち着いて話せるタイミングを二人で選び、外部の干渉が少ない場所でシートを広げます。スマホの通知を切るなど環境づくりもポイントです。
2.それぞれ書き出す
「最近の気持ち」「してほしいこと」「戸惑っていたこと」などを自分の言葉でシートに書き込みます。相手を責める表現は避け、「私」を主語にして自分の気持ちを表現しましょう。
3.内容の共有と受け止め
お互いが書いた内容を批判せずに読み、感謝や気づきを伝えましょう。「そう思っていたんだね」「教えてくれてありがとう」のような言葉で安心感を補強します。
4.具体的な合意を形成する
違いが出た部分については、無理のない範囲で具体的な約束をします。例えば「週に一度は気持ちを確認する時間をとる」「触れ合う習慣を増やす」など、行動に落とし込める形で決めることで、実効性が高まります。
5.振り返りを定期化する
最初の一回で終わらせず、定期的にシートを開いて振り返りをします。言葉にしなかった微妙なズレにも早めに気づけるようになります。
最初はぎこちなくても、続けるうちに自然に本音が出せるようになります。定期的に振り返ることで、言葉にしなかった微妙なズレにも早めに気づけるでしょう。
期待できる変化とセクシャルウェルネスへの効果
家事、育児、仕事など普段の生活での不満や感じていることを伝え合える関係を築くと、今までセックスレスだった夫婦間でもコミュニケーションのきっかけになります。例えば、家事や育児を全くしない夫とセックスをしたくない女性も少なくありませんが、男性側がそれに気づいていない場合も多いです。家庭に関することを切り口に、お互いの性に関する考えを共有するコミュニケーションも取れたら、互いの理解が深まり、誤解や遠慮が減っていきます。そういう意味でもこのシートは有用です。
セクシャルウェルネスは単なる行為の頻度ではなく、安心感・尊重・自己開示・同意を含む関係の質そのものです。シートを活用した本音の交換により、身体的な親密さだけでなく、感情的なつながりも強化されます。
話しにくかったテーマも、定型化されたフレームを使うことで取り上げやすくなります。自然に対話できる環境が整うでしょう。
まとめ
「なんとなく気まずい」「言いたいけど言えない」を放置せず、まずはこのシートを開いて小さな作戦会議を始めてみませんか。言葉にすることで、以前より穏やかに、お互いを大切に思える関係に近づけるでしょう。シートを活用したほんの少しの対話が、夫婦のセクシャルウェルネスを育む大きな一歩となるはずです。
監修

宮本亜希子 先生
BIANCA CLINIC 女性医療クリニックLUNA スワンクリニック銀座
参考文献
1) 内閣府男女共同参画局 . “夫婦が本音で話せる魔法のシート 「○○家作戦会議」” . 夫婦が本音で話せる魔法のシート 「○○家作戦会議」 .
https://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/index.html, (2025年08月04日) .
執筆
薬機法&医療広告ガイドライン対応ライター 芹澤美咲さん