不妊症とは?その定義と原因について解説

妊娠・出産

2025年6月10日

2022年に不妊治療が保険適用となり、治療や費用面のハードルは下がりました。それでも「赤ちゃんが欲しいのになかなか妊娠しない」「私たちは不妊症?」と悩む方は少なくありません。不妊はデリケートで相談しづらい問題ですが、正しい知識を持つことは重要です。ここでは不妊症の定義や原因について解説します。

不妊症とは?

不妊症は「妊娠を望む男女が1年間避妊せずに性交渉しても妊娠しない場合」とされています1)。特に女性の加齢は妊娠率低下と密接に関連しており、米国生殖医学会では35歳以上なら6か月夫婦で妊活しても妊娠しない場合、40歳以上ではすぐに不妊症の検査・治療開始を推奨しています2)。日本では不妊検査や治療経験のある夫婦は約4.4組 に1組と、決して珍しくありません3)

不妊症の原因 4)5)

原因は多岐にわたります。世界保健機関(WHO)の報告では、男性・女性両方の要因が35%、女性のみ37%、男性のみ8%、原因不明は5%です6)。特に晩産化の影響で、子宮筋腫や子宮内膜症、卵子の質低下が増えていると言われています7)
次からそれぞの原因について解説をしていきます。

<女性因子>

排卵因子
ホルモン異常、多のう胞性卵巣症候群 、卵巣機能低下、体重減少、ストレスなどによる排卵障害

卵管因子
クラミジア感染や子宮内膜症による卵管閉塞や卵管采の癒着

子宮因子
筋腫、内膜ポリープ、子宮内膜症、中絶・流産手術後の癒着や内膜菲薄化による着床障害

頸管因子
子宮頸部の手術や炎症による頸管粘液の減少に伴う精子の通過障害

免疫因子
抗精子抗体や精子不動化抗体という精子に対する抗体による、精子の通過障害や受精障害

<男性因子>

造精機能障害
精索静脈瘤、精巣炎、染色体異常などにより、精子の数や運動率が低下

性機能障害
心因性や、薬剤性、糖尿病などの病気を原因とする勃起障害や射精障害

精路通過障害
先天的、あるいは後天的な炎症などを原因とする精子の通過障害

<原因不明>

受精がうまくできない受精障害、また加齢に伴う卵子や精子の質の低下など、検査では原因が判明しない状態

まとめ

不妊症は原因が多様で、決して珍しいことではありません。医療は進歩していますが、特に加齢による卵子の質の低下に対しては決定的な治療法がないのが現状です。妊娠を考えたら、早めに生殖医療専門医を受診し、自分たちに適した方針を相談することが大切です。パートナーと話し合い、協力しながら進めていきましょう。

監修

柴田綾子 先生
淀川キリスト教病院 医長

参考文献

1) 公益社団法人 日本産科婦人科学会(編):産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版,東京:日本産科婦人科学会,2018;47,322

2) Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine: Definitions of infertility and recurrent pregnancy loss: a committee opinion. Fertil Steril 2020; 113: 533-535

3) 厚生労働省:不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック.令和7年3月. https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001073887.pdf

4) 一般社団法人 日本生殖医学会:生殖医療Q&Aよくあるご質問 Q4. http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html

5) 一般社団法人 日本生殖医学会(編):生殖医療の必修知識 2023,東京:日本生殖医学会, 2023; 53-55

6) Recent advances in medically assisted conception. Report of a WHO Scientific Group. Vol. 820, World Health Organization – Technical Report Series, 1992; 3-5

7) American College of Obstetricians and Gynecologists Committee on Gynecologic Practice and Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine: Female age-related fertility decline. Committee Opinion No 589. Fertil Steril 2014; 101: 633-634

執筆

医師 中里泉 先生