最近、目にすることも多い「フェムケア」という言葉。しかし、その意味や背景については、まだ十分に知られているとは言えないようです。「フェムケアって聞いたことがあるけど、何のことだろう?」と思われている方も多いのではないでしょうか。本記事では、フェムケアの定義や、注目されている理由について解説します。
フェムケアとは?
フェムケアとは、「Female(女性)」と「Care(ケア)」を組み合わせて作られた言葉です。「特定のテクノロジーによらず、様々な方法で女性特有の健康課題をケアする製品・サービス1)」を指します。最近は、より幅広く「女性の心身の健康の維持や向上のためのサービス」を表すことも増えてきました。
女性は月経、妊娠・出産、更年期、デリケートゾーンの問題など、生涯を通して体の変化を経験します2)。「フェムケア」は、このような変化に伴う悩みや不安に対して「自分自身の体と向き合って、主体的に適切なケアをしよう」という考え方の元に誕生した言葉です。
具体的なフェムケア 1)
フェムケアには、以下のようなものが含まれます。
- 月経用品(吸水ショーツ、月経カップ、オーガニックナプキンなど)
- デリケートゾーンケア(専用ソープや保湿剤、膣トレーニンググッズなど)
- 妊活や妊娠中に使える体調管理ツール
- 更年期の症状ケアやメンタルケア
- 女性向けサプリメントやセルフチェックキット
「フェムテック」とは何が違う?
「フェムケア」によく似た「フェムテック」という言葉を聞いたことがある方がいらっしゃるかもしれません。
フェムテックは「女性特有の悩みを解決するための技術」を指す言葉です1)。一方、フェムケアは先述の通り「技術を問わず、さまざまな方法で悩みを解決する製品やサービス全般」を指します。「フェムケアにフェムテックが含まれる」と考えるとイメージしやすいでしょう。
フェムケアが注目される理由
フェムケアが話題になっている理由として、以下のような社会的背景の変化が考えられます。
女性の社会進出の加速
女性活躍推進法が制定された背景もあり3)、近年は女性の社会進出が加速しています。雇用形態を問わない場合、女性の就業率は15~64歳で74.0%(2025年3月)4)です。
家庭と仕事の両立には健康状態に合わせたセルフケアが重要となるため、フェムケアが注目されていると考えられます。月経痛やPMS(月経前症候群)、更年期障害など、以前は「我慢するもの」「仕方がないもの」と考えられがちだった状態が、今は積極的にケアや治療がすすめられるようになり、フェムケアの視点からも再評価されるようになってきました。
性の話題に対する意識の変化
SNSやメディアが発達し、これまでタブー視されてきた性や性別に特有の話題が以前よりもオープンに語られるようになってきたことも要因と考えられます。「恥ずかしいこと」ではなく「自然なこと」として、月経や更年期など女性特有の健康課題に向き合う意識が広がりつつあるのです。
社会全体にとって必要なフェムケア
このように、フェムケアは、女性1人ひとりが心身の健康を維持・向上させ、生活の質を高める手段として広まってきました。
加えて、フェムケアの必要性は個人から社会へと広まりつつあります。それは、女性の健康課題による経済損失を減らすためです。経済産業省の調査では、女性特有の健康課題による労働損失などにおける経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円だと試算されています1)。
就業する女性が多数派となった今、女性の健康課題は社会全体の課題とも言えるでしょう。国としての取り組みでも、従業員の生産性向上のため、企業主導で積極的にフェムケアを活用する動きが出てきているのです。
まとめ
フェムケアとは、女性特有の悩みを解決するだけでなく、生活の質を維持・向上させるための技術やサービスです。社会全体としても、フェムケアの活用で生産性の向上などのメリットが期待されています。毎日の生活をより良いものにするために、積極的にフェムケアを取り入れてみてはいかがでしょうか。一方で、症状が辛いときは我慢せずに医療機関を受診することも大切です。生理や更年期の症状に困ったら、産婦人科へも相談してください。
監修

柴田綾子 先生
淀川キリスト教病院 医長
参考文献
1) 内閣府男女共同参画局.“男女共同参画白書 令和6年版 コラム3 女性活躍とフェムテック”.内閣府男女共同参画局.2025-06.
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r06/zentai/html/column/clm_03.html,(参照2025-05-06)
2) 働く女性の健康支援事業.“働く女性の心とからだの応援サイト 女性はライフステージごとに女性ホルモンが大きく影響する?!”.一般財団法人 女性労働協会(厚生労働省委託事業).
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/lifestage.html,(参照2025-05-06)
3) 政府広報オンライン.“女性の活躍推進”.内閣府大臣官房政府広報室. 2024-11-25.
https://www.gov-online.go.jp/article/202411/tv-5621.html,(参照2025-05-06)
4) 総務省統計局.“労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)3月分結果の概要“.e-Stat. 2025-05-02.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000040275124&fileKind=2,(参照2025-05-06)
執筆
臨床検査技師 佐々木祐子さん