あなたに合うのはどれ?更年期のホルモン療法

更年期

2025年12月16日

更年期障害は、女性ホルモンの急激な減少によって生じます。治療法には、減少するホルモンを補充する方法であるHRTが代表的です。ホルモン療法と聞くと、錠剤の内服をイメージされるかもしれません。しかし、HRTは、内服のほかにいくつかのタイプがあります。今回の記事では、HRTで使用する製剤の種類についてご紹介します。

HRTに使うホルモン剤とは?

まず、HRTでは、エストロゲンと黄体ホルモンを使用します。補充が必要なホルモンはエストロゲンですが、子宮がある場合にエストロゲンのみを投与すると、子宮内膜増殖症や子宮体癌のリスクが増加することが報告されています。そのため黄体ホルモンを併用しなければなりません。手術で子宮を摘出している場合は、エストロゲンのみを投与します1)

飲み薬だけじゃない!HRT製剤の基本タイプ

薬と聞くと、まず飲み薬を思い浮かべる方が多いでしょう。HRTで使用する製剤にも飲み薬はありますが、それに加えて、パッチ剤、ジェル剤が存在します。
飲み薬以外の種類があるものは、エストロゲン製剤(パッチとジェル)とエストロゲンと黄体ホルモンの配合剤(パッチ)です。黄体ホルモン製剤は、飲み薬しかありません1)
では、飲み薬、パッチ、ジェルにはどのような違いがあるのでしょうか?

経口剤(飲み薬)

錠剤を毎日服用することでホルモンを補充します。ほとんどの方にとって馴染みの深い方法であり、毎日内服するため、飲み忘れにくい方法です。日本ではこれまで、最もよく使われてきました。腸から吸収され肝臓を通過するため、胃腸や肝臓への負担がかかることがデメリットとなります。

経皮剤(パッチ、ジェル)

パッチを貼ったり、ジェルを塗ったりすることでホルモンを補充します。胃腸や肝臓を通過しないため、血栓症リスクを有意に高めず、生活習慣病に関連するような合併症がある方には特に望ましい方法です2)
パッチには、エストロゲンのみを含むもの(エストラーナテープ)と、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を含むもの(メノエイドコンビパッチ)があります。通常、エストラーナテープは2日に1回、メノエイドコンビパッチは3~4日に1回貼り替えます。皮膚から吸収されるため、内服に比べて胃腸や肝臓への負担が少ないことがメリットです。ただし、アルコールを含むため、皮膚のかぶれが問題となることがあります1)
ジェル剤では、エストロゲンを含むジェルを腕や太ももに塗布して使用します。毎日の塗布が必要ですが、塗布部位を変えることで皮膚トラブルを避けやすく、用量の調整も比較的容易です。ジェル剤には、ボトルタイプのル・エストロジェルと、1回分ずつ包装された使い切りタイプのディビゲルがあります。

どの製剤を選ぶ?

製剤選択は、患者さんの生活スタイルや体質、既往歴を考慮して決定します。肝機能に問題がある方や血栓リスクが高い方には経皮剤が推奨されます。一方、毎日の習慣として薬を服用することに慣れている方には経口剤が適している場合もあります。

まとめ

HRTには経口剤、パッチ剤、ジェル剤の3つの主要なタイプがあり、それぞれに特徴があります。過去の病気や治療によるリスクを考慮し選択しますが、使いやすさや継続のしやすさも重要な要素です。医師と相談しながら、ご自身のライフスタイルや体質に最も適した製剤を選択することが大切です。

監修

西田 欣広 先生
にしだ漢方内科・レディースクリニック 院長

参考文献

1)日本産婦人科医会(2022). 「ホルモン補充療法(HRT)の実際」. 日本産婦人科医会. https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2016/03/HRT2022.6.pdf, (参照 2024-09-09).

2)「周閉経期ならびに閉経後における内分泌とホルモン補充療法」. https://jsre.umin.jp/14_19kan/19-9review4.pdf, (参照 2024-09-09).