更年期には骨粗鬆症になりやすい?そのメカニズムと診断方法について解説

更年期

2025年8月12日

女性が閉経を迎える前後の時期である更年期は、女性ホルモンの分泌が大きく変化します。ほてりや発汗などの更年期障害の症状は広く知られていますが、実は、女性ホルモンの減少は骨の健康にも大きな影響を及ぼします。本記事では、更年期における骨粗鬆症の原因、診断の方法について、わかりやすく解説します。

骨粗鬆症とはどんな病気か

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、骨の量が減ったり、骨の質が悪くなったりして、骨の強度が低下することで骨折しやすくなった状態を指します1)。骨粗鬆症は女性、特に閉経後の女性に多く見られる疾患です2)

骨形成と骨吸収

骨は一見変わらないように見えても、骨形成(こつけいせい)という新たに作られることと、骨吸収(こつきゅうしゅう)という、溶かして壊されることを繰り返しています2)。骨形成と骨吸収がうまくバランスを保つことで、骨の強度が保たれています。

女性ホルモンと骨の関係

更年期にはエストロゲンという女性ホルモンが、変動しながら減少していきます3)。エストロゲンは、骨の形成と吸収の両方に作用する重要なホルモンです1)。エストロゲンの分泌が減少すると、骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨の量が減少してしまいます。
特に閉経後には、エストロゲンの減少が急激に進むため、骨粗鬆症が起こりやすくなります。このような閉経後に起こる骨粗鬆症を、閉経後骨粗鬆症と呼びます1)

どんな症状が現れるか

骨粗鬆症は痛みなどもなく、一般的には自覚症状がでることは稀です。このため、骨折して初めて気づかれる場合も少なくありません。
骨粗鬆症があるだけでは症状はないものの、骨折してしまうと日常生活が大きく障害されることとなります4)。骨粗鬆症の診療においては、将来の骨折を予防することが重要なのです。

骨粗鬆症の検査と診断

骨粗鬆症の診断には、骨密度を測定します。骨密度とは、骨の中にカルシウムなどがどの程度含まれているかを表す指標です。骨密度検査を行うと、骨の強さを数値で確認することができます。

DXA(デキサ)法

骨密度の測定方法として、DXA法と呼ばれる検査があります。これはX線を用いて腰椎(背骨)や大腿骨(足の付け根の骨)の骨密度を測る方法です5)。骨密度の評価としてはこの検査が一番適しているとされていますが、大型の装置が必要なため、どこの医療機関でも行えるわけではありません。

MD法

DXA法ができない場合は、手の骨で骨密度を測定するMD法という検査が行われることがあります5)。これもDXA法と同じくX線を用いた検査です。

また、その他に、かかとの骨を超音波(エコー検査)で測定する方法もありますが、これは診断に用いることはできません5)

骨密度検査は病院で受けられる?

医師が骨粗鬆症のリスクを評価し、検査が必要と判断した場合には、病院で骨密度検査を受けることが可能です。例えば、過去に骨折を経験している方や、骨粗鬆症が強く疑われる方が対象になります。整形外科で検査を受けることが多いですが、内科や婦人科などで検査できることもあります。

一方、健康診断や人間ドックなどで行われる骨密度検査は、自費診療となりますが、予防的に検査を受けたい方も利用できます。費用は、それぞれの施設や検査の種類によって異なるため、受診前に確認しましょう。

まとめ

更年期には女性ホルモンの急激な減少により骨密度が低下しやすく、骨粗鬆症のリスクが高まります。骨粗鬆症は自覚症状が少なく気づきにくい病気ですが、将来の骨折を防ぐには早期発見が重要です。特に40代以降の女性は注意が必要であり、心配な場合には医師に相談し、必要に応じて骨密度検査を受けることが勧められます。

監修

柴田綾子 先生
淀川キリスト教病院 医長

参考文献

1) 日本内分泌学会. 骨代謝・副甲状腺 閉経後骨粗鬆症. 日本内分泌学会. 2019-11-4.
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51#:~:text=%E8%96%AC%E5%89%A4(参照 2025-5-29)

2) 日本整形外科学会. 症状・病気をしらべる「骨粗鬆症(骨粗しょう症)」. 日本整形外科学会.
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html(参照 2025-5-29)

3) 日本産科婦人科学会. 産科・婦人科の病気 更年期障害. 日本産科婦人科学会. 2025-1-30.
https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/(参照 2025-5-29)

4) 竹内 靖博. 骨粗鬆症の診断とガイドラインの変遷. 日本内科学会雑誌. 2022, vol.111, no.4, p732-738.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/4/111_732/_pdf(参照 2025-5-29)

5) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版
https://jsbmr.umin.jp/pdf/GL2015.pdf(参照 2025-5-29)