生理休暇という制度をご存じですか?労働基準法で定められており、生理による体調不良で働くことが困難な場合、女性が休むことのできる権利です。しかし、制度があるにもかかわらず、実際に利用されることは多くありません。この記事では、生理休暇がどのような制度なのか、その実態をわかりやすく解説します。
生理休暇制度とは
生理休暇は、労働基準法第68条で定められている女性のための制度です。法律では、使用者(企業側)は生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと定められています1)。実は、この生理休暇は1947年から存在する制度です。
生理休暇は法定休暇にあたるため、就業規則に規定がなくても請求できます。また、生理の期間や生理による症状の程度には個人で差があるため、使用者(企業側)は休暇の日数を一律に制限することはできません1)。
具体的にはどういう状態だと使える?
生理の症状は個人差があるため、生理日の就業が著しく困難な状況を一概に定義するのは難しいです。具体的には次のような状態が該当します。
- 痛み止めを使用しても痛みが改善せず続く
- 生理による不快な症状が強く、安静にしてもその症状が持続する
有給?無給?企業によって異なる対応
生理休暇の賃金については法律で定められていないため、各企業の判断に委ねられています。2020年度の調査では、生理休暇を有給とする事業所は29.0%2)にとどまり、無給の対応が多い結果でした。なお、休暇は1日単位だけでなく、半日や時間単位での取得も可能です1)。
生理休暇、必要なときに使っていますか?
2020年度の生理休暇請求率は、働く女性のうち0.9%2)と、1%にも満たない状況です。法律で定められた権利であるにもかかわらず、ほとんどの女性が生理休暇を利用していません。生理休暇という制度があること自体を知らなかったという方も少なくないのです。また、制度を知っていても実際に取得するにはハードルが高いと感じる方もいるでしょう。一部の企業では申請しやすくするために生理休暇という名称を変更する取り組みも行われています3)。
まとめ
生理休暇は、法律で定められた働く女性の権利であり、健康的に働き続けるために必要な制度です。働く女性が制度について正しく理解し、必要なときには気兼ねなく利用できる職場環境の実現が求められます。生理による症状が強くつらい場合は、無理をせず、職場に相談するようにしましょう。生理休暇は、働く女性の権利なのです。
監修

宮本亜希子 先生
BIANCA CLINIC 女性医療クリニックLUNA スワンクリニック銀座
参考文献
1) 厚生労働省. 特集 働く女性と生理休暇. 働く女性の健康応援サイト.
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/special.html, (参照 2025-07-05).
2) 雇用環境・均等局雇用機会均等課. 「令和2年度雇用均等基本調査」結果を公表します ~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~. 2021.
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r02/07.pdf, (参照 2025-07-05).
3) 東京都産業労働局. 企業の取組事例. 2025. 女性特有の健康課題を知る、学ぶ!働く女性のウェルネス向上委員会. 2025.
https://women-wellness.metro.tokyo.lg.jp/examples/37/, (参照 2025-07-05).
執筆
医師 江口瑠衣子さん