生理前にイライラしたり悲しくなったりと、気持ちが不安定になる場合があります。これはPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)が原因かもしれません。PMSはよく知られていますが、PMDDは初めて聞く方も多いでしょう。本記事では、PMSとPMDDの違いについてわかりやすく説明します。
PMSとは?
PMSとは、生理が始まる前の時期にあらわれる心や体の不調を意味する言葉です1)。
具体的には、生理開始3〜10日前ごろに続く、心や体の症状をPMSと呼びます。
実際にどのような症状が起きやすいのか、くわしく見ていきましょう。
PMSで起きやすい症状
PMSにはいろいろな症状があります。その中でもとくにわかりやすい症状は、生理の前に出て生理が始まると軽くなったり消えたりする、周期的な症状です。
これには、以下のような症状があります1)。
体の症状
- 胸の張りや痛み
- 下腹部のふくらみ(膨満感)
- 頭痛
- 関節の痛み
- むくみ
- 体重が増える
心の症状
- 気分が不安定になる
- イライラしやすくなる
- 不安を感じる
- 落ち込んだ気分になる
- 集中できなくなる
PMDDとは?
PMDDは、PMSの中でも精神症状がとくに強く、日常生活に大きな影響を及ぼす状態を指します1)。
気分の落ち込みやイライラ、不安などが日常生活に大きく影響するほど酷くなるケースは少なくありません。
PMDDの主な症状
PMDDでは、以下の精神症状が主にあらわれやすいのが特徴です1)。
- 気分が大きく変わりやすくなる
- 強いイライラや怒りを感じ、人間関係のトラブルが増える
- 深い落ち込みや絶望感を抱き、自分を責めてしまう
- 強い不安や緊張が続く
PMDDは女性の1.2 ~ 6.4%に起きる可能性があると言われています2)。
PMSとPMDDの違いは?
PMSとPMDDの主な違いは、症状の種類と精神的な症状の重さです。
簡単にたとえると、以下のような違いがあります。
PMS:月経前に体調や気分が優れないものの、なんとか日常生活を送れる状態
PMDD:月経前の精神症状が非常に重く、日常生活に支障をきたす状態
PMSはさまざまな症状があらわれるものの、なんとか日常生活に深刻な支障をきたすほどではない場合が多いのが特徴です(個人差があり症状がひどい方もいます)。
一方、PMDDは精神的な症状が重く、日常生活や社会生活、対人関係に深刻な支障をきたしやすい傾向にあります1)。
PMSとPMDDは「別々に起きる」のではなく、月経前に起きる症状のグラデーションと考えるとわかりやすいです。
PMDDはPMSの ”精神的な症状が酷い状態” と覚えておくと理解しやすいでしょう。
自分の生理前症状を把握して自責しないようにしよう
生理前の不調に悩み、自分を責めてしまう方は少なくありません。しかし、全女性のうち約50~80%はPMSの症状を感じていると言われています3)。PMSやPMDDでは、低用量ピル、漢方、抗精神薬などの治療薬を使うことで症状がやわらぐことが多いです2)。
「自分だけ」と思わず、つらいときは自分をいたわるのが大切です。生理中だけでなく、生理前の症状が重い場合も、婦人科の受診を検討しましょう。
監修

柴田綾子 先生
淀川キリスト教病院 医長
参考文献
1) 日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023,2023
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2023.pdf
2) 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会:月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針.2025年3月
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/PMS_PMDDshishin.pdf
3) 白土なほ子:PMS,PMDDの診断と治療―他科疾患との鑑別―,昭和学士会誌,第77巻 第4号:360-366,2017.(特集:女性医学:最近のトピックス)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/77/4/77_360/_pdf/-char/ja
執筆
美容&医療ライター 伊藤美咲さん