骨盤底筋群のゆるみが原因?産後に起こる尿もれ

産後ケア

2025年9月30日

出産後、尿もれに悩む方は少なくありません。とくに、くしゃみや咳、重いものを持ち上げたときに起こる尿もれは、産後の女性によく見られる症状です。その原因として、骨盤底筋群のゆるみが関係していることがあります。
この記事では、骨盤底筋群のゆるみによって生じる尿もれについて、わかりやすく解説します。

産後の尿もれの原因

産後の尿もれの代表的な原因として、腹圧性尿失禁が挙げられます。腹圧性尿失禁は、お腹に力がかかると尿がもれてしまう状態を指し、これは主に骨盤底筋群のゆるみによって起こります1)2)
骨盤底筋群は、子宮や膀胱、直腸などの臓器を下からハンモックのように支えている筋肉の総称で、骨盤の底に位置しています。お腹の臓器を正しい位置に保ち、尿道を締めて尿もれを防ぐなどの大切な役割を担っています3)。通常は腹圧がかかっても骨盤底筋がしっかりと働くため問題はありませんが、骨盤底筋がゆるんでいると尿道を閉じる力が弱くなり、腹圧がかかるとそのまま尿がもれてしまうのです。

骨盤底筋群が緩む原因とは?

骨盤底筋群は、妊娠や出産によって大きな負担がかかるとゆるむことがあります。また、加齢によっても筋力は低下していきます。更年期や閉経前後の女性は、女性ホルモンの分泌が低下します。女性ホルモンの一つであるエストロゲンが減少すると、骨盤底筋がゆるみやすくなることが知られています1)

骨盤底筋訓練(ケーゲル体操)とは

骨盤底筋のゆるみによる産後の尿もれの改善には、骨盤底筋訓練が効果的とされています4)。なお、骨盤底筋訓練は尿もれの治療の第一選択であり、腹圧性尿失禁だけでなくほかの原因による尿失禁にも有効といわれています5)。ゆるんだ骨盤底筋群を鍛えることで尿道を閉じる力を強化し、腹圧性尿失禁の改善を図ります。
骨盤底筋訓練を始めて、すぐに効果が出るわけではないといわれています。毎日続けることで2~3カ月後に効果が現れるとされており、根気強く地道に続けていきましょう。ただし、腹圧性尿失禁のなかでも症状が重い方には、単独では十分な効果が得られないことがあります。腹圧性尿失禁の状態や程度によっては手術なども治療の選択肢となります1)。このような場合は泌尿器科に相談するとよいでしょう。

骨盤底筋訓練のポイント

骨盤底筋訓練の具体的な方法をみていきましょう。まず、仰向けになり、足を肩幅程度に開き、膝を立てます。次に肛門、膣、尿道を5~10秒間ほど、ぎゅーっと締めます。その後、30秒程度力を抜きます。これを10回繰り返します。さらに、肛門、膣、尿道を締める動作をきゅっきゅっと早いテンポで行います。これも10回繰り返します。これらの動作を1セットとして5回以上行うとよいとされています4)

まとめ

産後の尿もれの主な原因は、骨盤底筋群のゆるみによって起こる腹圧性尿失禁です。骨盤底筋訓練を日々継続することで、改善が期待できます。効果が現れるまでに数ヶ月かかることもありますが、正しい方法で根気強く取り組むことが大切です。症状が重い場合や改善が見られない場合は、早めに専門の医療機関に相談しましょう。

監修

宮本亜希子 先生
BIANCA CLINIC 女性医療クリニックLUNA スワンクリニック銀座

参考文献

1)東京女子医科大学附属足立医療センター骨盤底機能再建診療部. “腹圧性尿失禁”. 東京女子医科大学附属足立医療センター
https://twmu-amc.jp/mce/prsurgery/type/1.html(参照日 2025-07-08)

2)「厚生労働省事業」東京大学産婦人科学講座監修. “マタニティトラブルQ&A”. 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ.
https://w-health.jp/maternity_qa/detail20/(参照日 2025-07-08)

3)内田佳子. “骨盤底筋を鍛えよう!”. せいてつLab, 社会医療法人製鉄記念八幡病院.2017.
https://www.ns.yawata-mhp.or.jp/content/items/68(参照日 2025-07-08)

4)東京女子医科大学附属足立医療センター骨盤底機能再建診療部. “骨盤底筋訓練”. 東京女子医科大学附属足立医療センター
https://twmu-amc.jp/mce/prsurgery/contents/training.html(参照日 2025-07-08)

5)日本排尿機能学会, 日本泌尿器科学会. 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]. https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/38_woman_lower-urinary_v2.pdf(参照日 2025-07-08)

執筆

医師 江口瑠衣子さん