妊娠悪阻とは?症状や治療法について解説

妊娠・出産

2025年8月26日

つわりは妊娠初期に多くの妊婦さんが経験しますが、まれにとても強いつわり症状が頻回にみられる、いわゆる「妊娠悪阻」を認める方がいます。妊娠悪阻は、通常のつわりと異なり、体重減少や脱水を伴うため、適切な治療が必要な状態です。医療者においてもつわりと悪阻を混同している方も見受けられます。
この記事では、妊娠悪阻がどういう病気で、どういった治療法があるのかをわかりやすく解説します。

妊娠悪阻とはどういう病気?

つわりという言葉は多くの方が耳にしたことがあるでしょう。一方、妊娠悪阻(おそ)は耳慣れない病名かもしれません。妊娠悪阻は、通常のつわりとは区別され、妊娠中にひどい吐き気と嘔吐が頻繁にみられ、身体の水分が不足したり(脱水)、体重が減少したりします。つわりでは、気持ち悪さや吐き気があっても体重は少しずつでも増え、一般的に身体が脱水になることはありません1)
通常、つわりは妊娠5週頃から始まり、16~18週頃には落ち着くことが多いとされますが、なかにはそれ以降も続く場合があります1)

症状と診断方法

妊娠悪阻では次のような症状がみられます1)

  • 体重減少(妊娠前の体重と比べて5%以上)
  • 脱水
  • 電解質の異常
  • ケトーシス

ケトーシスとは、絶食や飢餓状態などで糖分をエネルギーとして利用できなくなったときに、脂肪を分解してエネルギーを作り出す状態を指します。つわりではケトーシスを含むこれらの所見はみられません。脱水が進行すると、脈が速くなったり血圧が下がったりすることがあります。妊娠悪阻の診断はこれらの症状や所見に基づいて行われます。

妊娠悪阻の治療法

妊娠悪阻と診断された場合、一般的に経口での飲水の摂取が困難になるため、点滴(輸液)による水分補給を行います。輸液には通常、ブドウ糖やビタミンB1が含まれ2)、必要に応じて電解質やほかのビタミンも追加されます1)。また、吐き気がひどい時は、吐き気を軽減させる薬も使用されます1)2)。ときには、数日以上の長期に渡って経口摂取ができず、入院が必要になることがあります1)
脱水が補正されて、嘔吐が治まったら経口での水分摂取を再開します。水分を摂取しても嘔吐がないことを確認出来たら、食事も再開します。最初は、薄味の食べ物を少しずつ何回かに分けて食べます。嘔吐がみられず食事が摂れるようになれば、徐々に量を増やしていきます1)

妊娠悪阻のときの周囲の人の理解

妊娠悪阻は気の持ちようなどではなく、妊娠中に起こりうる病気です。妊婦さんが吐き気・嘔吐などの症状やつらい気持ちを訴えるときは、病気であることを理解しサポートすることが大切です。また、症状が強い場合は医療機関の受診も勧めてあげましょう。

まとめ

妊娠悪阻は通常のつわりと異なり、病院での治療が必要な場合があります。吐き気や嘔吐が頻回にみられ、経口での飲食物の摂取が難しく体重が減少するような場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。症状の変化に気を配り、不安がある場合には迷わず医師に相談することが大切です。一人で悩まず、医療従事者や家族と相談しながら、この時期を乗り越えていきましょう。

監修

西田 欣広 先生
にしだ漢方内科・レディースクリニック 院長

参考文献

1) Antonette T. Dulay, MD. 妊娠悪阻. 2022. MSDマニュアル プロフェッショナル版.
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/18-%E5%A9%A6%E4%BA%BA%E7%A7%91%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%94%A3%E7%A7%91/%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E3%81%AE%E7%95%B0%E5%B8%B8/%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E6%82%AA%E9%98%BB,(参照2025-07-04)

2) 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン産科編2023
https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_sanka_2023.pdf, (参照2025-07-04)

執筆

医師 江口瑠衣子さん