子どもに性について伝える時、「私たちの時代とは感覚が違うかも」と感じた経験はありませんか。現代の性教育は大きく変化しており、親世代も新しい知識と価値観を身につけることが求められています。本記事では、性教育の変化と家庭での取り組み方についてご紹介します。
時代と共に変化する性教育
日本では昔から性に関する話題がタブー視されてきましたが、近年では「性」に対する価値観が大きく変わってきました。現代の性教育は、従来の「思春期になったら教える」から「幼児期から段階的に学ぶ」へと大きく変化しています1)。今では、より幅広い内容を学ぶ「包括的性教育」が広まりつつあります。発達段階に合わせて、妊娠・出産に関わる生理的な知識だけでなく、ジェンダーや人権、自己肯定感などを学ぶことが必要だと考えられているのです2,3)。
親世代も知っておきたいポイント
親世代の性教育と比べ、どのような点が変わったのでしょうか。主なものをご紹介します。
・性の多様性への理解
LGBTQ+などの性の多様性に触れ、「男らしさ」「女らしさ」といった決まった性役割ではなく、一人ひとりの個性や多様性を尊重することが重要視されています。
・同意の概念
他人の身体に触れる時や自分の身体について話す時には、必ず相手の同意が必要だと教えます。自分の身を守り、性犯罪や性被害を予防する観点から大切です。
・デジタル時代の性情報
現在は、インターネットの普及によって子どもたちが触れる情報も多様化しています。正しい知識を身につける前に誤った情報や極端な内容に触れることもあるため、適切な情報リテラシーも併せて教える必要があります3)。
家庭では話しやすい雰囲気づくりが大切
親世代は、大半の人が学校や家庭で十分な性教育を受けてこなかった時代です。いざ子どもに伝えるにあたって「何をどう伝えればいいのかわからない」「恥ずかしい」と感じることが多いのではないでしょうか。
特別な準備は必要ありません。幼児期には「自分の身体は自分のもの」だと伝えるところから始め、成長と共に身体の変化や避妊などの正しい知識を伝えられるようにします4)。性の話題をタブー視せず、日常会話の中で自然に取り入れられるオープンな雰囲気を作りましょう。
まとめ
性教育の内容とタイミングは、親世代から大きく変化しています。家庭でも適切な時期での関わりが求められますが、特別なことは必要ありません。子どもと一緒に新しい価値観を学ぶ気持ちで、さまざまな観点から「自分を大切にする大切さ」を伝えましょう。「現代の価値観を知る」「オープンに話せる環境をつくる」ことを意識して、一歩踏み出してみませんか。
監修

宮本亜希子 先生
BIANCA CLINIC 女性医療クリニックLUNA スワンクリニック銀座
参考文献
1)西岡笑子.“わが国の性教育の歴史的変遷とリプロダクティブヘルス/ライツ”.日本衛生学雑誌.2018,73,p.178–184.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/73/2/73_178/_pdf
2)公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンアドボカシーグループ.“ユースから見た日本の性教育の実態調査報告書- 包括的性教育を目指して-”.2021年 6月.
https://www.plan-international.jp/activity/advocacy/youth/pdf/0630_Youth_Report_01.pdf(参照2025-07-04).
3)公益財団法人 日本財団 性と妊娠にまつわる有識者会議.“包括的性教育の推進に関する提言書”.令和4年8月.
https://www.nippon-foundation.or.jp/wp-content/uploads/2022/08/new_pr_20220812_01.pdf,(参照2025-07-04).
4) 鈴木紀子,西田みゆき.“日本における性教育に関する研究の動向-家庭,学校,専門職者との連携はどのようにするべきか?-”.日本看護研究学会雑誌. .2017,Vol. 40,No.3,p.443.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/40/3/40_20170804238/_pdf
執筆
臨床検査技師 佐々木祐子さん