性感染症は感染したとしても、症状を自覚していない方は珍しくありません。しかし、症状を自覚していないままキスやセックスをすると、相手に感染させてしまう恐れがあります。「まさか自分が」と思うかもしれません。しかし、自分の身体に違和感を抱いたら、通常の血液検査に加えて性感染症の検査も受けてみませんか。
本記事では、血液検査で判明する性感染症と、その他の検査法で診断できる性感染症について詳しく解説します。
梅毒の検査方法
梅毒の診断には血液検査が有効で、検査項目は梅毒RPR抗体と梅毒TP抗体の2種類があります1)。これらを組み合わせた検査で、現在の感染状況と治療効果を判定可能です。
梅毒は病期によって、異なる症状を示します2)。第1期では感染部位に無痛性の潰瘍が出現し、第2期では全身にバラ疹と呼ばれる発疹が現れます。手のひらや足の裏にも発疹が生じるのが特徴的です。
梅毒の感染経路
梅毒は主にオーラルセックスやアナルセックスを含む性的接触により感染します2)。特に早期顕症梅毒の時期は感染力が高く、皮膚や粘膜の病変部位から梅毒の病原体が排出されます。
妊婦はとくに梅毒に注意が必要
妊娠中の梅毒感染は、胎児の先天的障害を引き起こす可能性があります2)。妊娠初期の血液検査による梅毒スクリーニングが重要です。
梅毒予防にはコンドームの正しい使用が最も効果的ですが、コンドームで覆われない部分からも感染する可能性があります3)。
HIVの検査方法
HIVの診断には血液検査が必要です1)。また、HIV-RNA定量検査により血中のウイルス量を測定し、治療効果の判定に用いられます。感染後2~6週間にあたる急性期には、発熱、リンパ節の腫れ、のどの痛み、皮疹、筋肉痛、頭痛、下痢などの症状が現れます3)4)。
HIVの感染経路
HIVは主に性的接触により感染します。感染者の血液、精液、腟分泌液に含まれるウイルスが相手の粘膜や傷口から侵入することで感染するケースが多いです5)。注射器の共用や母子感染も感染経路となります。
HIVもセックスにおけるコンドームの正しい使用が、最も有効な予防方法です3)。
B型肝炎の検査方法
B型肝炎の診断には、HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、HBc抗体、HBV-DNAなどの検査項目があります1)。これらの組み合わせにより、急性感染、慢性感染、既往感染の鑑別が可能です。
B型肝炎の感染経路
B型肝炎は血液のほか、性的接触、注射器の共用、輸血、母子感染が主な感染経路です。特にB型肝炎は性的接触による感染が多い傾向にあります。
なお、B型肝炎にはワクチンがあり、予防接種が有効です3)。ワクチンは感染を必ず防ぐものではないため、予防のためにコンドームの使用を徹底しましょう。
血液検査ではわからない性感染症は多い
血液検査では診断できない性感染症も数多く存在します3)。
たとえば、以下の性感染症は粘膜や分泌物を使い検査する場合がほとんどです。
- クラミジア 1)
- 性器カンジダ 6)
- 淋菌(淋病)1)
- ウレアプラズマ 7)
- トリコモナス 8)
特にクラミジアや淋病は不妊症の原因となることもあるため、早期発見と治療が重要です。
「もしかして…?」と思ったら性感染症の検査を受けよう
性感染症の種類によってはセックスだけでなく、キス(口腔感染)や飛沫感染でも罹患する可能性があります3)。
泌尿器科や婦人科では、性感染症に関する検査をフルパックで受診できる医療機関もあります。もし少しでも不安があるなら、まとめて検査を受けられる医療機関を探してみましょう。
監修

西田 欣広 先生
にしだ漢方内科・レディースクリニック 院長
参考文献
- 国立極地研究所 . “感染免疫検査一覧表(肝炎関連検査・STD関連検査・その他)” . 国立極地研究所 . https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/hp-lab/rinkenhome/subfile/DCMI/kessei_kennsaitirann_pdf.pdf , (参照 2025-09-10).
- 国立健康危機管理研究機構 . “梅毒(詳細版)” . 感染症情報提供サイト . https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/syphilis/010/index.html , (参照 2025-09-10).
- 厚生労働省 . “性感染症” . 厚生労働省 . 2023 . https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/index.html , (参照 2025-09-10).
- 厚生労働省 . “知っておきたい 性感染症の正しい知識” . 広報誌「厚生労働」2023年8月号 . 2023 . https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202308_00001.html , (参照 2025-09-10).
- 東京都福祉保健局 . “HIV/エイズ” . 東京都性感染症ナビ . https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/hiv_aids/index.html , (参照 2025-09-10).
- 東京都福祉保健局 . “性器カンジダ症” . 東京都性感染症ナビ . https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/seikansensho/knowledge/candidiasis/index.html , (参照 2025-09-10).
- 日本性感染症学会. “マイコプラズマ感染症 . 性感染症 診断・治療ガイドライン2020草案 . https://jssti.jp/pdf/2-10.pdf , (参照 2025-09-10).
- 川崎医科大学総合医療センター . “3.細胞診検査” . 病理科 .https://g.kawasaki-m.ac.jp/dept/byouri/saibou.html, (参照 2025-09-10).
執筆
薬機法&医療広告ガイドライン対応ライター 芹澤美咲さん
